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2020年 模索中


by shin_iri

ダンボール戦機の3DCG

『ダンボール戦機W』のシリーズ後半から新シリーズ『ダンボール戦機ウォーズ』にかけて、3DCGパートで作画を混ぜてダイナミックなシーンを連発してるCGアニメーターさんがいるようで、そのシーンがいずれも面白いことをやっているので少し取り上げてみようと思います。(画像はクリックすると大きくなります)
ダンボール戦機では基本的に3Dパートはエフェクトも全てCGで、おそらくコンテから直に3Dで画面をおこす(原画マンによるレイアウトラフ原を下敷きにしない)作り方なので、モーションやポージングも作画的なものとはだいぶ違っています。今回取り上げるシーンはその中で作画エフェクトや個性的なカメラワーク、撮影処理の変化など、明らかに他と違って見えるので、スタジオ単位ではなく、個人の仕事ではないかと考えられます。
毎回3DCGIのクレジットは「OLM Digital」としか表記されていないので本当に同じ方が担当されてるのかどうか確かめられないのがつらいところ・・・3DCG担当の方の名前がちゃんとクレジットされている作品も少なくないのでいつか明らかにしてくれるといいのですが・・・・。

まず『W』の最終話とOP3からクロス+リング光。他作品のサンジゲンさん等ではもう珍しいものじゃないかもしれませんね。他のシーンではこういう作画的なエフェクトは全く使われていないのでかなり目立っていますが、一度素材を作ればある程度の使い回しがききそうなので、今後は他の方も使うようになったりすることもあるかもしれません。
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ここは明らかに作画(手描き)でエフェクトを描いています。基本的に2コマですが光る直前に1コマになっている箇所があったり。紙に描いて取り込むのは手間が大きそうなのでタブレットで描き足しているのでしょうか。
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さらっとガニ股ジャンプまでやっちゃう。3DCGメカパートでもエフェクトを原画マンやメカ・エフェクト作監が描くというものなら他作品でもよく見られますね。

『W』最終話の決着シーン。作画エフェクトを出しながら変形して作画で不死鳥エフェクト。尾の部分はCGエフェクトだったりしてハイブリット。
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フィニッシュの後のシーン、細かくハイライトや傷、影を描き足してディティールアップしています。この方の担当シーンはアップ時に影にグラデーションがついたり(作画でいうブラシに近い効果?)、細かいハイライトが入ったりして、作画のメカに近い質感を目指しているように見えます。構図一つ一つがロボットアニメらしい広角でちょっとアオるというケレンミのあるもの。
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3DCGパートはレイアウトを原画マンが担当している場合を除いてはレイアウトに修正が乗らない(チェック段階でカメラポジションの修正はできるみたいですが)ので、ハッタリや空間的な画面など、誇張のある構図の巧拙はかなり担当の方の実力に左右されているのではないかと思います。

『ウォーズ』1話。
アバンタイトル後半の主人公の機体の活躍シーンでも作画エフェクトを織り混ぜた派手なアクションを担当。武器を出すバンクシーンでは作画のオバケやエフェクトを多用。カメラが寄る際に必ずハッタリのきいた構図になっていて、見せたい絵がはっきりしている感じで、原画に相当するようなフレームをかなり意識的に作っているような印象。トレスブレのような動きまで入っていて強い作画感。
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このカットはほんとにスペシャルで、アニメ的なタイミングやカメラワークを使いながら、CGのメリットであるカメラワークの自由さも存分に盛り込まれていてすばらしい。腕を斬り上げる瞬間に力が向かう上方向に向けてカメラの角度が変化して、(空間的な移動を追うカメラ、ではなくて)力の動きと連動したカメラワークを付けていてかっこいい。破片も作画になっています。3枚目と4枚目で破片の左右の動きにずれが出ているので、この小さな破片でもレイヤー分けまでやっていて細かい。
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他のシーンでの破片は破片の素材を大きなもの→小さなものに置き換えていく感じなので、絵を割って動かしているような変化はありません。3DCGは間のフレームを抜いて2コマ打ちになっているのが基本だと思うのですが、この方の担当と思われるシーンでは1コマや3コマになっている動きもあって、作業の仕方が他とはだいぶ違うように思えます。
GyaO!でこの第1話が無料で見られます。1:19~2:10。

『ウォーズ』6話、デルタクロス発動~決着まで。デルタクロス発動のカットのエフェクトははっきりと作画とわかります。
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この後のフィニッシュの回転切りのカットでは関節が外れているくらいダイナミックなポーズとブラシ&オバケの連続で、絵の形を崩して見えるようにしていて作画に近い感覚。

『ウォーズ』OPから、大砲発射のカット(発射エフェクトも一部が作画で描き足されています)。右は1話の別の方の担当と思われる同じ武器を構えるカット。明らかに大きさが違ってハッタリが全然違います。砲身の長さだけではなく、他のパーツも大きさや角度まで違っているので、新しいモデルを組んでしまっているということでしょうか。広角レンズで大きくT.Bしてちょっとアオる、というスケール感の強調されたカメラワークにもロボット好きがにじみ出ているよう。
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ここで挙げたカットはほんの一部で、他にも作画エフェクトのカットなどはたくさんあります。本編で見ていただければこれらのシーンの上手さと浮きっぷりがよくわかるはず・・・・。この方は元々原画マンだったという可能性もあるのでしょうか。動きのアイデアやタイミングは鹿間貴裕さんの仕事の参考にしているのではないでしょうか。6話でも『SAO』13話へのリスペクトが随所に・・・
自分は作画のこと以上にCGに対しては門外漢ではありますが、作画の代替としてのCGより、作画とのハイブリットや作画には難しい部分へ特化していくことになれば、表現は多様になり新しいものが見られるようになって望ましいことなのではないかと思います。
現在、この方は5~6話に一度くらいの参加ペースのようなので今後も楽しみにしたいと思います。
by dozeutea | 2013-05-13 18:19 | アニメ